【狛江強殺】全国の学校図書館に一冊『「ルフィ」の子どもたち』【闇バイト】

「ルフィ事件」はなんだったのかを知る一冊

ルフィを不名誉な形で世に知らしめ、あれ、考えてみれば本家ルフィも海賊だよな…、とか想像させられてしまっており尾田栄一郎先生は訴えた方がいいと思うルフィによる連続強盗殺人事件。

死者が出た狛江の事件が注目されがちですが、その前の2022年末に起きた広島の事件の被害者は、2023年10月時点で今も意識不明と伝えられています。

フィリピンの留置所(留置所といいつつわりと普通に暮らせる)から日本の実行犯を動かしていた指示役「ルフィ」は総勢4名。一方ルフィ事件で立件された8つの強盗に関わり、フィリピンから動かされていた実行犯は44名。

とにかく注目を集めた事件なので、犯人たちについて取材した無料で読めるニュース記事も非常に充実しておりこちらもまとめて今後アップする予定ですが、まずは私的によりお勧め度の高い、書籍『「ルフィ」の子どもたち』を紹介します。

なぜあえて有料の書籍を薦めるかなんですが、この本、取材に超力入ってるんですね。裁判行くわ地元を訪ねるわ、アングラな取材先も頼るわで記者魂がみなぎっていて、一本きりのウェブ記事には書けない熱や気合があって読み物としての力を感じる、これがまず一点。

あと二点目として、ルフィ事件は8件の連続強盗で使い捨てられた末端が多すぎて、全容が見えにくいんですよ。この本でも全員には触れられていませんが(だって犯人は50人以上いるし)、それでもさまざまな境遇でこの事件にかかわった人が読めるので、事件への解像度があがります。

さらに三点目としては、ルフィ事件後も似たような強盗事件が多発しているので(世も末)あれこれどの強盗だっけ??になりがちなので(ほんとに世も末です)あらためて元祖と言えるルフィ事件をしっかり押さえておくことで他の事件を見る時もよりクリアに見ることができるでしょう。

報道はフィリピンにいた指導役のルフィ4名や、記事的に「映える」若く美しい女性の犯人にフォーカスを当てがちなんですけど、この本、「あれ、そんな人もいたっけ?」みたいな人にもスポットを当てていて、そこも読ませるんです。

親が子どもに読ませたい一冊&学校に一冊置いておきたい

個人的には『「ルフィ」の子どもたち』を小中高校の夏休みの読書感想文の課題図書にすれば闇バイトやろうと思う中学生を減らせるのではないかと思いますし、全国の学校図書館に置くべき本はこれでしょう。

ただ闇バイトやりかねない危うげな若者って、活字読む習慣ある人少なそうなんですよね……。私個人としては活字で輝く一冊だと思うんですが、広く知れ渡ってほしい内容なので漫画やドラマ化してほしい。映画だとこれまた危うげな若者には敷居高いじゃないですか……。2000円くらいするし。民放だと敷居がいくつもありそうなのでNHKさんたのんますよ~。

現代的なツールと古典的な動機のコラボ

ここからはちょっとだけ『「ルフィの子ども」たち』レビューです。

まず犯人たちがもともと何をしていたかが、めちゃくちゃ現代です。こんなん。

犯人たちの前職

・ゲームアカウントの転売
・配信業
・SNSでの札束自慢(これは職業ではないですが)
・地下男性アイドル

20世紀にはなかったものです。そんなことを言えば、上記四つを実現するに不可欠な「スマホ」も「SNS」も20世紀にはなかったのですが。

現代的なツールが並ぶ一方で、犯人たちの動機は古来から人が犯罪に手を出す大いなる動機である「借金」「ギャンブル」「恋人(彼女の前でええかっこしたい/彼氏(指示役)のために尽くしたい)」が目立ちました。現代的ツールと古典的動機のコラボレーション。

ギャンブルが悪いわけではないもののめっちゃ考えさせられる

太字にしますが犯人たちの「ギャンブルと借金がセットになってるケース」がびっくりするぐらい多い!最近の若者は車離れ酒離れでギャンブルも離れてるのでは、と思ったんですが(パチンコ屋中高年多いし)若いわりに昭和かってほどギャンブル率が高いんですよ。

そして賭け金が1レースに数十万と明らかに身の丈にあっていない。早々に「詰む」賭け方です。こんな賭け方をしてしまう、リスク感覚がおかしい人なら、確かに同じ感覚で闇バイトにも手を出してしまい、強盗殺人という死刑か無期しかない選択肢も良く考えずにやってしまうよなと思います。「普通わかるでしょ」が通用しないのです。

こんなことおかしい、をしてしまう人に、こんなことはおかしい、と、どう教えればいいのでしょうか?

闇バイトした人達の共通点「身の丈に合ってないズルくておいしい裏技がきっとあるはず…」

闇バイトの実行犯たちは「最初から犯罪であることを知った上で参画した人」もいれば「最初はホワイトな案件だといわれだまされた人」もいます。

先にふれたとおり借金が動機になっているケースが多いのですが、中には「30万円の借金」で闇バイトに手を出した、あまりにもったいないケースも出てきます。

生育環境がよくなかったのでは(ロクな保護者ではなかったのでは)……、という疑問もわいてきますが、育った家庭は案外さまざまです。

経済状況は裕福ではないと思われる人に限らず、地元の名家、というようなお家も。親子仲は険悪な家もあるものの、一方で実行犯で東京地裁では無期懲役の判決となった永田は、親や身の周りの人にはむしろ人懐っこかったなどこれもさまざま。

もともと周りの人間が悪い輩で、そういう人間関係の挙句に闇バイトにたどり着いた人だけでなく、SNSを介して自分からあえて志願した人までと、ほんとに状況がさまざまです。悪い人たちとつるんでなくてもSNSを介してアッという間に反社の仲間入りができてしまう現代。

ほんとうにさまざまな人が出てくるのですが、出てくる人たちのほぼ全員が、身の丈にあってない裏技的な何かに期待していたんだろうなというのは感じます。実行犯は使い捨てであり、指示役は使い捨ての実行犯を駆使して「楽して大儲け」ができていたわけですが警察も黙っちゃいないわけです。

警察庁の統計では刑法犯を①凶悪犯②粗暴犯③窃盗犯④知能犯⑤風俗犯⑥その他の刑法犯に分けられますが、強盗は凶悪犯。殺人、放火、強制性交等とランクが一緒であり、強盗殺人は死刑か無期懲役です。社会を揺るがす悪として警察も本気で捕まえに来るのが凶悪犯であり、テレグラムを使いフィリピンで優雅な留置所生活をしていた4人の指示役もまんまと捕まったわけです。

人は一人じゃ悪いことはできないが集団だと歯止めがきかない

あと闇バイトの実行犯はその時初めて顔をあわせた集団、というのも考えた人の頭がいいですね。やはり人は一人じゃ悪いことはしづらいけれど複数いたら「自分だけのせいじゃない」という愚かしさから手軽に悪事は遂行されてしまうんだなと思いました。

そしてこれは若年層でより顕著です。(集団犯の割合は成人より少年の方が多い)

北海道で2024年だけで凄惨なリンチ殺人が二件起きていますが(旭川女子高生殺人、江別大学生殺人)、どちらも加害者は「若者・集団」です。こういった状況を鑑みるとやはりこれは当の子どもにしてみれば親から言われたくない言葉の確実にトップ10に入る言葉でしょうけど「つるむ人は選べ」でしょう。

主犯一人ではできなかったと思います。「つるむ人は選べ」。寂しいからといってしょうもない人とつるむと人生取り返しのつかないことになります。

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