静岡牧之原、13歳女子の「スマホ」による母親殺害事件はスマホのせいなのか

加害者は13歳なので、たぶんこれからの報道はあまりない(佐世保の事件的な扱い?)

2023年1月、静岡県で40代の母親が13歳の娘に刺され死亡した事件。きっかけは「スマホの使い方をめぐる親子のトラブル」だったため、青少年のスマホの是非も含め注目されています。

だからこそ事件の今後が知りたいものの、加害少女は13歳。14歳未満だと「触法少年」というくくりになり、刑事責任を問えません。したことも犯罪行為でなく「犯罪行為に触れる行為」となります。

2004年、佐世保で小学校六年生が同級生を殺害した事件がありましたがあちらと同じ位置づけです。あの事件も、事件のその衝撃のわりに、その後の報道が控えめだった印象です(ネットはさておき)。

※なお少年事件の、14歳の次の、もう一つの大きな区切りが18歳。18歳以上なら死刑求刑の可能性も出てきます。1999年の光市母子殺害事件の加害者は事件当時19歳で、死刑が求刑されています。

原因は「スマホだけ」じゃないだろうねと

加害者が13歳のこの牧之原の事件はこれからもなかなか全容が伝わりにくいのかな、という中でスマホ害悪論が一人歩きしていくのが心配です。

この母娘が「スマホのやり取り以外はいたって普通の親子。ときたま意見がぶつかったり喧嘩をすることもあるけど、お互いを信頼してる。そんな親子が「スマホの利用方法」というただ一点でお互いがいがみ合うようになり、いずれそれは強い憎しみへと変わり、娘が母親を殺害するに至り……」とは、なかなか考えにくいですよね。

いや、ほかの要因あるでしょと。スマホは、コップの中にたまった水をあふれさせる最後の一滴だったんでしょと。そのコップの中の水をためた主要因はなんだったの???の方が重要では??

被害者と加害者になってしまった母娘の関係、そして母娘をとりまく環境(母親は離婚していたようですが別れた父親、しいては同居していた祖父母、学校の先生、習い事の先生、友達など…)があり、これらを慎重に見ていく必要がある中で、手っ取り早いヒールとして「スマホ」をやり玉にあげるのは危険だと思います。

裁判までいかないとわかんないこと多いので今の時点じゃなんも言えねえ…と思った二つの事件

今今回の牧之原の件は加害者が未成年で伏せられているところも多いと思いますが、加害者が大人で情け容赦なく報道されても、案外「え!」と思うような重要な事実って、あとにならないとわかんないんだなあと思った経験があります。ある二つの悲惨な虐待死事件です。

一つ目は東京目黒の船戸優愛ちゃん虐待死事件。5歳児の優愛ちゃんに「あそぶのってばかみたいだからやめる」と反省文を書かせた養父である雄大被告の異常なDVが当初報道されており、もちろん異常なDVなのは同意するんですけど、しかし加熱する報道が収まったあとのころに出た雄大被告の「大麻所持で追訴」というニュースを見て、え、そうなの??と。この一つを知ってるか知らないかで見え方が変わるな、これを知らずにこの事件をなんかいっちょかみした風に言うの怖いな、とすら思いました。

ワイドショーのコメンテーターとか、トレンドネタを扱うYouTuberの人たちってこの恐怖とどう折り合いをつけているのでしょう。結構な恐怖ですよ。

また二つ目は千葉、野田市のこれも非常に傷ましい栗原心愛さん虐待死事件。字は違えど被害者は「みあ」さんと、読みが私と一緒でほんとこの事件は本当にしんどいのですが、勇一郎被告の妻であり、虐待に時に加担していたなぎさ被告は精神的な疾患を患っていた、というのも、これもかなり後からの報道で知りました。

これもそれを知ってると知らないとでは、事件の見え方がだいぶ変わってくるように思います。(事件の凄惨さから、精神疾患を患っているなら情状酌量の余地はあるよね、とは私はとても思いませんが……)

あとからこういう、「え?」というのが出てくることがある以上、あんまり早期では何も言えないよなとしか言えないですよね。牧之原の事件も、その後の展開をゆっくり待ちたいと思います。

一方でスマホ「無罪!!」というのも違うとも思う

今時点の牧之原の事件の一部しかいきわたっていない報道情報をもとにした一方的なスマホ有害論は反対ですけど一方で、スマホはイノセント!一切悪くない!という「お父さんは悪くないお酒が悪いの」理論も違うかなと思ってるんですね。

確かにスマホなんて魅力的なツール、自分が中学校の時に知ったらどっぷりだわな、というのは私自身ネットとゲームばっかりしてた大学生なんで非常~~によくわかる。

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思春期子育てで悩む母:「スマホはダメ人間製造機」

スマホが無罪とは言えないよなあ…、と思わせる、子育てで相当悩んでる母親たちの掲示板があります↓「子どもがストレスの元って人いますか」

あくまでこの掲示板は「母親の言い分」という一方の話なので、こちらの掲示板で悩んでいるお母さんのお子さん本人、もしくは母子双方を知る第三の家族などに聞いてみると、もしかしたらまったく違った地獄が語られるのかもしれませんが、少なくとも掲示板を見る限りは親の心子知らず、超絶ハードモード思春期育児の様子が伝えられています。

そしてこの掲示板を見ると、お子さんのスマホ利用に手を焼いているお母さんほんと多い。スマホは「ダメ人間製造機」と呼ばれていて、確かに掲示板の内容を見ると、お子さんたち、スマホが本体なのではというくらいの抜け殻状態になっちゃってるんですね。

しかしこれも「母親にすら疎んじられている子どもがスマホに逃げている」とも言えるわけでほんとこの辺言いだすと難しいんですけど。

ちょっと脱線:子は思春期をあとでどう振り返るのか

ちょっと脱線ですが、上の掲示板に出てくるようなお子さんたちって20年くらいして「親に迷惑かけたなァ…」と思うのか、きれいさっぱり忘れてるかどっちなんでしょう。

こんなときに参考にしたいのが自分自身の若かりし頃です。私自身は中年になった今でも気は短いくらいなので10代は言うに及ばず、当時を思い返すと「物置の扉破壊して悪かったなあ…」という気持ちと、「まあでも親も親であのときああしてくれなかったしこうしてくれなかったし」のカフェオレ状態です。

感謝してるけど、ひっかかるものもある。そしてそれは親側の事情だけでなく、親からよくしてもらったことは当たり前のように受け取り右から左に流れ、親から望まない対応をされたことはいつまでも執念深く覚え、むしろ思い返すことで執念を増幅させている、という子側の受け取り方の問題もあるでしょう。

さっぱり牧之原の事件の状況が分からない中で今私たちができること

そんなわけで、牧之原の事件の概要がたぶんこれからも分からない状況で私たちにできることといえば、①安直にスマホを悪ものにしないことと、あと、②親御さんや教育関係者の方など、子どもと接する機会のある人は子どもに対してこの事件の話をあえてすることだと思います。私も講演の仕事で子どもに話をするときは、この事件についてこれからあえて触れていきたいと思っています。

今回牧之原では取り返しのつかない最悪の結果になってしまいましたが、正直「スマホやゲームでもめて子どもに殴られる」レベルまでいけば全然「あるある」ですよ。

話すときは「牧之原で恐ろしい事件が起きた、だからスマホもゲームもダメなんだ」ではもうそれ自体がお子さんにとって一つの火種になるので、こんな事件が起きたけどどう考える??と「聞く」で。「スマホのせいでカッとならず、気持ちよくスマホと付き合うためにはどうすればいいんだろう」と話し合えると最高ですね。

「聞く」って「言う」の5億倍大変ですけど、がんばって!