マーティン・スコセッシ監督映画『沈黙』見ました。小説の方が5万倍いい……。
二次元と三次元の分厚い壁を感じた。
二次元なら自然な「日本語を話す外国人」、三次元だとつらい
二次元と三次元の厚い壁、それは言語です。
フィギュアスケートをテーマにしたアニメ『ユーリオンアイス』と映画『沈黙』は「外国人がわらわら出てくるが、メインの言語がある」という共通点があります。
ユーリオンアイスは日本人ロシア人スイス人カナダ人タイ人……と登場人物は超インターナショナルですが、全員日本語で話します。ロシア人コーチも。私が日本人なせいもあり別にそれに違和感はない。
一方『沈黙』は、鎖国したての江戸初期の長崎で、日本で迫害の末に棄教したとされる尊敬する師の真相を追うため、ポルトガル人の司祭が日本に潜入する話です。
日本にたどり着いた司祭と、長崎の隠れキリシタンたちは英語で会話をするんですね。
そこで貧しく疲れ果てた、ボロを着た隠れキリシタンの村人たちが、「私もこのくらい英語が話せたら、海外旅行に行く気が倍になるだろう」というくらいペラペーラ、ペッラペーラ、と流暢に英語を話すんですね。
え……って、なんで村人、TOEICで800点取りそうなくらいこんな英語ペラペラなの……って。
違和感との闘いが、日本人の観客には世界一求められます。
「そもそも、ポルトガル司祭なんだから、ポルトガル語なんじゃね?」とか、出てくると、もう「無邪気な頃の観客の私」に戻れない。
『ユーリオンアイス』の場合、言語を発してる側で見れたという大きなアドバンテージがあったものの、二次元三次元の違いだなー、って思った。
それに『沈黙』、原作の小説は村人たちの話す九州弁が素朴で、それが悲しいシーンをますます物悲しくドラマチックにさせてよかったのに。英語じゃあの切なさがなんも伝わらないよ。
日本人は特に厳しい映画です。
欧米人のアジア観って、雑な!
あとなんか、欧米人のアジア観って雑だなって思った。
私アメリカのドラマ『ハワイファイブオー』も大好きで、こちらハワイが舞台で、日本のヤクザが出てきたりなど話に結構日本が絡むんですね。
そのわりにそこで描かれる日本が明らかに「どこここ?」なの。日本というより欧米人の思う「アジア」という感じ。
日本と中国と韓国とどっかを足して5で割ったような、どこでもないどこか。アジアですらない。
なんとなく建物や人の着てるものや雰囲気が小汚いのが欧米人の思い上がりが透けて見えてムッとする。
ハワイファイブオーを見て日中韓の違いなんてアメリカ人にはわからないんだねと思っていましたがマーティン・スコセッシ監督もわかってなかったね。
日本を舞台にした映画やドラマを撮影するなら、この違いは把握しないとまずいと思うけど。
日本描写の拙さに湧き上がる愛国心。こんなもん日本じゃねえ、はためく日章旗。(ロケ地は台湾だったみたい)
映画『沈黙』で唯一よかったのは、人が死ぬシーンは映像の方が文字よりもビリビリと伝わってきたけどそんくらい。小説の方がむちゃくちゃ面白いので『沈黙』は絶対小説で。
映画のストーリーはおおむね原作に忠実だったけど、だからこそ小説の良さが際立った。
原作厨大勝利な一本です。先に映画見た人が小説読んだらびっくりすると思う。面白すぎて。
特に終わり方は絶対小説の方がいい。唯一小説と映画で結構違うのはラストだけど、なんで変えたかね。小説の終わり方無茶苦茶かっこいいのに。最後の最後でハッとして終わる。すごいよ。
最後の一文を覚えている小説ってあんまりないと思うけど、そんな貴重な小説。
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