『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』ホラー漫画って表現力が一番求められるジャンルだ

ジャンルにこだわらず幅広く漫画を読みますが、
レディースコミックとホラーだけは読みません。

これはうちの父親が「君に届け」を読まないのとほぼ同じ理由だと思います。うん、私には関係ないな…ってやつです。

毎回スピリッツの最後をまがまがしくさせていた伊藤潤二先生

私と伊藤先生の出会いは、スピリッツの巻末に載っていた「うずまき」でした。

しかし私はホラーを読まないので、パラパラめくりながらうむ、伊藤先生、今週も相変わらず禍々しい、と確認するだけでした。

美人を描くのは簡単だ

物事を禍々しく描くって難しいと思います。

かわいく描くって簡単です。女児だって最初に書くのは「かわいい女の子」です。かわいくないものを描くほうがよほど難しいです。

プロの漫画家でも、若者の顔立ちに口や目の横にシワの線を足すだけで年配の人を表現するようなお茶の濁し方をしているケースって結構あります。年をとったゆえのハリのない肉感など、「老」な表現って高度です。

【余談】老人を描かせたら日本一の清野とおる先生

ただ、「老」なら現実世界にいくらでもモデルがいますが、禍々しさって想像力の世界です。

禍々しいものを想像する力と、ちゃんと読者も禍々しいととってもらえるように表現する力。ホラー漫画家は高度な表現力がないとできない仕事だと思います。

伊藤先生が、ほのぼのを

そんな高度な表現力を持つ伊藤先生が、ねこ漫画ですよ。

伊藤先生の漫画なのに、終わりが「これからも元気で仲良くね」ですよ。縦読みすると呪いの言葉になるでもなく。

特に好きな「激闘!猫じゃらし」の話は、文に起こすと「猫じゃらしって、へたな人がやってもぜんぜん猫が来ないよね~」っていうシンプルな話なのですが、たまらなく面白い漫画に昇華させる表現力。漫画界屈指の技巧に酔いしれます。

漫画家を目指す人は読んだほうがいいと思います。